神戸アジアン食堂バル「SALA 」店主
奥 尚子 さん
Oku naoko
国籍や男女、年齢に関係なく、それぞれが
それぞれの立場で、お互いを認め合えるように。
「何かできることはないか?」と
考え過ぎて何もできなかった時期を超えて。
大学時代、社会起業学科に所属して社会問題について学んでいました。でも、講義を聞いていても、フィールドワークに行っても、結局はそれだけではわかないことばかり。だから実際に当事者の方のもとに足を運び、その方を支援しているNPOの団体の方にもお話を伺いに行きました。そこで“アジア人のお母さんが困っている”という問題に直面。それまでにも様々な場所に足を運び、ホームレスや高齢者施設、過疎化といった社会問題とも向き合って、自分に何ができるのか?ってことを考え過ぎて何もできない時期があって……。でもだんだんと「自分が一番、このままにしておきたくない」って感じるところで動けたらいいなと思うようになっていきました。
問題化されていないから見過ごされている。
そんな社会にいることがすごく嫌だった。
私が大学一年生のとき、日本に住んでいるタイ、台湾、中国、フィリピンの4か国のアジア人のお母さんたちと出会うきっかけがありました。その時、お母さんたちは“自分の強みについて”話し合いをしていたんですが、困っていることや、自分に自信がないことの話ばかりが中心になっていました。私は、きっと何かがお母さんたちの自信を奪っているのではないかと思い、一人ひとりとお話をさせていただきました。そこでわかったのは、異国の地で暮らすお母さんたちの「言葉の壁の問題」、「子育ての問題」、「就労の問題」など、日本で普通に暮らしている私たちでは気がつけないことばかり。世界には様々な社会問題がありますが、お母さんたちの抱えている問題には光が当たっておらず、だから誰の目も向かない。「そんな社会で私は暮らしたくない」と、思いました。
自作のお料理を楽しそうに説明してくれる姿を見て、
自信を取り戻すきっかけになると確信。
お母さんたちはいつもミーティングで集まるときに、私たちに食べてもらおうと自分の国の料理をタッパーに詰めて持ってきてくれました。当時、大学1年生だった私はエスニック料理を初めて食べて、本当に美味しくって感動しました。料理の説明をするお母さんたちは、自分の国のことも知ってほしいからすごく一生懸命に楽しそうにおしゃべりをしてくれて。そのときに、この料理がお母さんたちの自信を取り戻すきっかけになると確信しました。その後、私は大学の中でお母さんの料理を販売するイベントを企画しました。お母さんを何とか説得し、用意してもらった30食は、すぐに完売。お母さんも次は100食作る!と自信をつけてくれました。この経験と出会いが、今のお店『神戸アジアン食堂バルSALA』につながっています。
〈神戸元町で暮らす学生にメッセージ〉
自分の目で見て、実際にふれて、体感することが本当に大切です。ネットやメディアの情報で知ったつもりになるのではなく、たくさん足を運んで話を聞いて、自分の感性を磨いてください。元町にはそれを後押ししてくれるコミュニティや大人たちがたくさんいます。『SALA』のお店のコンセプトは、「Empowerment of all people」/国籍や男女、年齢に関係なく、それぞれがそれぞれの立場で、お互いの価値を認め合い、自分自身の価値を認められる社会。夢を持ちながら生き生きと暮らしていける社会。SALAは、EMPOWERの場、きっかけとなれるように頑張っています。いつでも相談してください。
南京町